お知らせ

2013年07月28日

<連載企画> 農林水産物の海外輸出について【NO3】

これまで私は、農産物を海外に輸出するため販売先や販売経路について調査してきました。

一方、肝心の農産物生産者の実態、とくに流通経路の現状はどうなっているのでしょうか?
多くの農産物は、JAや市場を通じて流通していますが、これまでと違った流通形態がここ数年見られています。
産直市やスーパーへの直接卸などがその一例です。
今の市場に、農家に、どのようなことが起きているのでしょうか?

まず、H社を訪ねてみました。
H社は、徳島市内で月に一度、農産物や加工商品の産直市を開催しています。
2年半を経過し、最近では1万人以上を動員すると言われています。
登録者は農産品生産者、加工業者あわせて170あまり、生産者と加工業者の割合は半分ずつとのことでした。
1回の開催に半分の80あまりの出店があるそうです。
イベントを通じて生産者と消費者を直接結びつける事業、販路拡大ビジネスとしてネットや出張販売を通じて消費者を増やす事業を展開しています。
H社は、イベント開催による収益を目指していません。
その為、生産者から売上手数料等は頂いてないとのことでした。
テントなど会場設営のために少額の場所代は頂いていますが、イベント開催で利益は発生しないとのことでした。
生産者と消費者を直接結びつける、両者にとってありがたいイベントとなっています。
では、H社のビジネスモデルはどこにあるのでしょうか?
ネットなどの販売や定期購入顧客を獲得し、その販売手数料を収益の柱と考えているとのことでした。
ただ、商品を単品で受けた場合には生産者に直接繋いでいるそうです。H社が間にはいることはありません。
生産者が複数にまたがる場合にH社が取りまとめに入ります。その手数料収入を当面のビジネスとしているそうです。
徐々に顧客は増えていっているものの、まだまだ取扱高は少ないそうです。
また、H社の悩みとして、取扱高が増えていった時に商品量が確保できるのかなど、まだまだ生産者との信頼関係の構築など、超えなければならない課題があるそうです。
もちろん商品は買い取り、又は、事前に量を決めて作付けをお願いしているそうです。
これだけ生産者に配慮しているH社でさえ、商品確保の面でかなり不安を持っているのが現状のようです。

続いて、生産者を直接訪ねてみることにしました。

まず、Iさん。Iさんは徳島安2GAP農産物の認証を取り生産しています。
作付けしているのは、ブロッコリー、スイートコーン、枝豆などです。
Iさんは、県の認証を得た後もしばらく販売先に苦慮していました。JAに出荷しても今までと何も変わらず、一時は何のための県の認証かと思ったそうです。
今、Iさんは県内大手スーパーKに出荷しています。契約農家とは言わないまでも全量買い取りで取引をしているそうです。
Iさんが、作付けしている耕地面積は1.3町ほど、奥さんと二人で収穫しています。
以下、Iさんの話。
極端に言うと、野菜の小売価格、つまり消費者がスーパーで野菜を買う値段は、いくら私がいいモノを作っても、そう大きな差は出てきません。
例えば200円の野菜なら、私の野菜にも200円の値段を付けて、県の認証農産物ですよ、と付加価値を付けてKスーパーは同業他社対策として販売します。付加価値があるから300円ですと値段を跳ね上げることはないと
言うことです。逆に言えば、今の徳島産は認証農作物でなくても一定レベルにあると言うことです。
おそらく私の卸値も、Kスーパーが市場から仕入れる値段とそう大差ないのではと思います。
それでも私は、十分メリットを享受しています。
仮に、私の作物が市場の卸値と同じだったとしても、市場を通じていませんから、そこでの手数料10%を払う必要がありません。
それに、収穫したものを箱詰めしたり運送したりしませんから、そうした経費はかかりません。
種も肥料も一般の小売店から入手しています。
これら諸々の経費で20~30%ぐらい節約することができています。
なおかつ、箱詰め作業や出荷準備のための作業がないため、収穫面での効率も20%ほどアップしています。
2割多く出荷できているのです。おかげで1.3町の畑を3回転させることができています。
一人で年間4町近くの収穫です。生計を立てていくには十分です。
しかし、Iさんは現状について、こうも話していました。
自分は恵まれていると思うが、こういう話をしても一本にまとまらない農家の体質、各農家で同じような機械を何台も保有している無駄、後継者の不安など、本当に農家は個人事業者だと感じるとのことでした。
もっともっと農家が結束する必要があると力説していました。
その為にも、個人でも、法人でも、あるいは行政でもいいが、いずれにしてもリーダーが必要だと。

H社やIさんの話から、生産者を取りまとめるには、かなり高いハードルがあると言うことを感じました。
海外へ輸出しようにも、商品がまとまるのだろうか・・・。

続いて、Jさんを訪ねてみました。
くしくも、Jさんは、先ほどのIさんと違って、Kスーパーの中で産直市に出品していました。
Jさんの話によりますと、今、Kスーパーの産直市に出品している農家は、Jさんのグループで約120戸程度。
同様のグループが県内に12グループあるそうです。
積極的なグループ、そうでないグループ、まちまちあるそうですが、Jさんのグループはその中でも売上的にも上位を占めるグループだそうです。
Jさんは、そのグループのリーダーを努めています。
Kスーパーの産直市は、売上高の20~27%の手数料を場所代としてKスーパーに支払う仕組みとなっています。
販売価格は生産者自らが設定します。但し、売れなかった場合には、当然のことながら収入はありません。
自由競争なので価格競争になるんじゃないかと尋ねると、Jさん曰く、前はそうだったが、自分のグループはある程度調整しているとのことでした。
どういう事かと言えば、先ほど、安2GAPのIさんの野菜が200円としましたが、これを例にとりますと、Kスーパーの野菜売り場の値段はIさんの200円。仮に市場からの仕入れ値段を100円としますと、Jさん達 産直市出品農家の野菜は100円~200円の間で値段設定をするそうです。
大雑把に言いますと、100円以下なら市場に出す方が有利だし、また、Kスーパーの野菜売り場にある200円を超えると売れ残る可能性があります。
だから、この範囲内で価格設定をするのだそうですが、Jさん達グループの中の優秀な野菜には180円前後の高めの価格設定をお願いするそうです。他の商品のために価格を調整しているのです。
時にはJさん自らの出品を犠牲にしてでも全体運営をしているそうです。
おかげで順調に運営できているとのことです。すごいリーダーシップを感じました。

私は、農業生産者をまとめるのは非常に難易度の高い事じゃないかと考えていたのですが、Jさんの話を聞き必ずや道が開けると感じました。

次回、最終回とします。

<続く>